人と、川・アユの関係研究所

人と、川・アユ(意見)

天然アユを増やす取り組み(事例集)

更新日:2013年10月
事例4 ダム上流への遡上を制限し、必要な親魚数を確保する
ダムや堰ができると、遡上を阻害するという問題に目が行きがちで、上流に遡上したアユを産卵場に下らせることはさほど気にされないことが多い。しかし、一定規模以上の堰堤やダムの上流に遡上したアユは降下ができずに取水口に迷入したり、貯水池の上流で産卵してしまうことが多く、ともに再生産に繋がらない。アユが多い場合はさほど問題にはならないかもしれないが、資源水準が低下した状態では大きな痛手となる。
中国地方の大河、江の川では昭和期には平均300トンあったアユ漁獲量が平成初期以降平均30トンに激減している。原因は天然遡上量の減少であることは明らかであった。天然遡上の減少の理由はいくつか特定され、その一つが産卵親魚の不足であった。さらに、中流の浜原ダム(写真1)を遡上したアユが産卵期にダムを降下できず、産卵に参加できていないことも親魚不足の一因となっていた。

島根県水産技術センター(浜田市)は、島根県内の江川漁協と広島県の江の川漁協など関連する漁協やダムを管理する中国電力に呼びかけ、浜原ダムの遡上制限(魚道の通水量を増やし、遡上できないようにする)を2012年から5年間の期限付きで始めた。まずはダム下流での再生産量を増やし、天然遡上量が増えてきたら、再び魚道を解放し上流に遡上させるというプランである。この対策と合わせて、下流河川では産卵期の禁漁や産卵場整備といった対策も実施している。

効果の検証はまだ十分と言えないが、一連の対策を始めてから天然アユが増え始めたことは事実である。島根県水産技術センターでは検証のためのモニタリング調査も実施しており、さらに、この事業をシンポジウムなどで積極的に情報公開している。
  • ダム上流側の漁協が自分たちが不利になるにもかかわらず、遡上制限という前代未聞の対策に賛同した。事業の目的がきちんと理解された結果である。
  • 遡上制限だけでなく、親魚保護や産卵場整備といった対策を総合的に実施している。
  • 5年間という期限付きで事業を実施するとともに、細かなモニタリングを行い、その効果を科学的に検証し、かつその情報を公開している。

アユ学概論

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