人と、川・アユの関係研究所

人と、川・アユ(意見)

天然アユと農業の関係を良くする(高知県物部川)

更新日:2013年10月
河川環境を圧迫する農業
高知県の物部川は下流部に広大な農地を抱えていて、農業用水の取水量は多い。渇水期には川の水のほとんどが取水され、本流を流れる水が無くなってしまうこともある。アユの遡上期に水が無くて、アユが川を上ることができなくなることもあった。
それだけではなくて、田植えの時期(3~4月)には毎年のように川が濁る。代かきした泥水が本流に大量に流れ込むためである。アユにとっては踏んだり蹴ったりなのである。
物部川のように、過大な取水や濁水の問題で、漁業と農業は対立的な構造になりがちである。しかし、けんかしていても何も生まれないわけで、お互いが歩み寄れる方法を模索したいものである。
天然アユ100%清流米
最近、豊岡の「コウノトリ育むお米」のような「生き物ブランド米」が注目されている。生き物がたくさんいる田んぼで作ったお米には「安全」という付加価値が生まれる。食の安全が重要視される今、これが一種のブランドになっている。
こういった取り組みを物部川でも進めたくて、かつて提案したのが天然アユによるお米のブランド化。名づけて「物部川漁協推薦、天然アユ100%物部川清流米」。実際、物部川(ダム下流)では2004年以降、稚アユの放流ゼロで、「天然アユ100 %」を何度も達成している。夢物語ではない。
農業の側では「物部川の清流と天然アユを守っています」というメッセージを出すことで、環境保全型農業の実践をPRすることもできる。応援してくれる消費者も少なくないはずだ。
結局のところ、利害が対立する中では、お互いが少しずつ得するような仕組みを作らないと妥協点を見出すことは難しい。農家の方もアユで米のブランド化ができれば、水の使い方や泥水を流すことにも気をつけてくれるかもしれない。
(追記)
このブランド米の効果ではないのだが、物部川流域ではJAの若い人たちを中心に田んぼの濁水を川に流さない取り組みが始まった。こういった取り組みが広がって、人と川の関係が良くなることを願う。

アユ学概論

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